レバレッジの重要事項
新聞や雑誌などでよく「ハイリスク・ハイリターン」という表現をみますが、たいていはつぎのような意味で使われています。
成功時の利益の「プラス50万円(プラス50%)」をリターンとみなし、1年で50%も増えるのだから高いリターンだという意味で「ハイリターン」と表現し、他方、失敗時の利益(マイナスの場合は損失)の「マイナス30万円(マイナス30%)」をリスクとみなし、これが大きなマイナスであれば「ハイリスク」と表現しているようです。
もっと簡単に言えば、「成功すれば大儲けできるが、失敗すれば大損する」という状態をハイリスク・ハイリターンと呼んでいるのです。
同様に、「成功しても小さな儲けしか得られないが、失敗しても小さな損ですむ」状態をローリスク・ローリターンと呼び、さらに「成功すれば中ぐらいの儲け、失敗すれば中ぐらいの損」という状態をミドルリスク・ミドルリターンと呼ぶ人もいます。
残念ながら、これらはまちがった表現です。
図の下側に正しい定義を整理しました。
じつは、リターンとリスクの大きさを正しく認識するためには、それぞれのケースが生じる確率″を知る必要があります。
先の例で、成功と失敗の確率をそれぞれ50%と仮定しましょう。
そして「平均的に予想される利益(金額、あるいは、元本に対する率)」を計算します。
これがリターン″の正しい定義です。
数学の用語としては期待値″と呼ばれるものです。
先の例なら、50%の確率でプラス50万円の利益、残り50%の確率でマイナス30万円の利益なのですから、(50×0.5)+(130×0.5)U10で、平均的に予想される利益はプラス−0万円(元本に対する比率でみれば10%)となります。
よって、正しい定義でのリターンはプラス−0万円(プラス−0%)なのです。
いまから預金に預けるかどうかを判断しようとする人が実質金利を計算する際には、将来予想されるインフレ率を考えなければならなかったのと同じように、これから投資先の資産を選ぼうとする人は、候補となる資産のリターンを評価する際に、将来予想され他方、先の例の資産に100万円を投資したとして、1年経過した時点で、現実に生じる利益がプラス−0万円ということはありません。
結果としては、プラス50万円か、マイナス30万円のどちらかが実現します。
仮に、投資は成功し、資産は150万円に値上がりしたとしましょう。
すると、1年後の時点にいるとして「過去の結果として利益(それがマイナスなら損失)」を求めると、プラス50万円になります。
ややこしいようですが「リターン」と「結果としてのリターン」を混同してはいけません。
投資の1年後に結果としてのリターンがプラス50万円になったとしても、投資時点でリターンをプラス一0万円と計算したことがまちがっていたわけではありません。
また、たとえばこの資産に過去2回投資し、それぞれ成功してプラス50%の利益(率)を勝ち取った人がいるとしましょう。
2回とも結果としてのリターン(率)はプラス50%の利益を考えなければなりません。
しかし、将来の予想は不確かなものでしかありえません。
だから、起こりそうないくつかのケースを想定し、それぞれの確率を推測することで、平均的に予想される利益(Uリターン)を求めるのです。
「リスクとリターン」の正しい意味と考え方ですが、これから投資するかどうか迷っている人は、これからおこなう投資の(平均的に予想される)リターンもプラス50%であるなどと、単純に推測してはいけません。
もし、結果としてのリターンをそのままこれからのリターンとして採用すれば、過去に株価が上がった株式について、今後も株価が上がる可能性が高いと予想していることになります。
実際に、これと同じような単純な予想をしている人もいるのでしょうが、現実には、株価は上がったり下がったりで、過去の株価上昇は将来の株価上昇を約束するものではありません。
ですから、過去の結果としてのリターンを参考に、現在から将来にかけての運用の、平均的に予想されるリターンを推測してはいけないのです。
つぎに、リスクの定義を説明しましょう。
じつは、リスクにはいくつもの定義があります。
リスクを計算するための指標にはいくつもの種類がある、と言った方がわかりやすいかもしれません。
それでも、単に「投資に失敗したときに予想される損失」をリスクと呼ぶような表現は、正しい定義には決してふくまれません。
一番代表的なリスク″の定義は「予想される結果(利益)のバラツキ」です。
将来起こりうる結果が複数考えられて、それぞれの結果の間に大きなちがい(バラツキ)があることがリスクである、とみなすのです。
また、先にリターンの計算が確率を必要としたように、リターン」の正しい意味と考え方リスクを測るための計算でも、それぞれの結果が起こりうる確率がある程度推測できる状態を想定しています。
先の例であれば、予想される利益は@プラス50万円かAマイナス30万円のどちらかでした。
この@とAがどれくらいのバラツキをもつかを計算し、それをリスクの指標とするのです。
ここでは、予想される結果は2つしかありませんから、両者の差である80万円をバラツキの指標としてみましょう(これだと確率を意識していませんから、厳密には正しいリスクの指標ではありませんが、代用の指標としてみてください)。
現実のほとんどの資産では、その資産に投資した際に予想される結果として、かなり多くのケースを想定しなければならないでしょう。
100万円を1年間投資するとして、1万円の儲けになるケース、2万円の儲けになるケース……25万円の儲けになるケース……3万円の損になるケース……18万円の損になるケース……のように、かなりややこしい場合分けをすることになります。
このとき、リスク(U予想される利益のバラツキ)をどのように計算するのかは、かなりむずかしい問題です。
だからこそ、いろいろな指標がリスクを測る指標として考案されてきたのです。
どの指標も、統計学の手法を応用しています。
もっともシンプルで、よく使われる指標は「リスクとリターンやリスクの計算においては、利益は金額で計算されるときもあれば、元本などにここまでの定義を整理しましょう。
金融商品広告や新聞の金融記事などの中に、リスクを示す指標としてボラティリティ″という言葉が出てくることがありますが、これこそ、予想される利益(率)の標準偏差を示す金融用語です。
あるいは、ある資産について過去のリスクと将来のリスクはさほど変わらないと仮定して、過去の利益パターン(いろいろな利益が生じうる確率の分布)から標準偏差を計算し、これをボラティリティと呼ぶこともあります。
統計学の初歩を理解している人にとって、標準偏差はさほどむずかしくない概念ですが、よくわからないという読者の方が多数派かもしれません。
各種の金融商品について本気で理解したいのであれば、統計学の基礎知識は不可欠です。
スクとリターン」の正しい意味と考え方それによって、「みんなが使っているのだから、これもひとつの定義として認めればいい」という正当化がしやすくなり、さらに安易に使われるようになるという悪循環が生じています。
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